冗談にしか思えなかったが、冗談で裸を晒す女はいないはず。
しかも、バイト先で出会ってから一週間しか経ってないし。
初体験はまだだったが、女の子と付き合った経験はあった。
告白された時や、デートした時の様子からすれば、
女の子というのは、恥ずかしがり屋なのだと思っていた。
それを、自分から裸になって、指で広げて見せるなんて。
薄気味悪かった。何かの罠じゃないかと感じた。
狂ってるのかもしれないし、病気持ちかもしれない。
しかし、美穂がぼくを見つめる目に曇りはなく、
それらのどれでもないと告げているように感じられた。
バイト先は飲食業で、ぼくは裏方が担当だった。
店頭で接客をする彼女とは、仕事上の接点は余りなかったが、
ぼくが戸惑っていたら、やり方やコツも教えてくれた。
押しつけがましくなく、かといって変に突き放すこともなく、
彼女がいたお陰で、いつもは人見知りしがちなぼくも、
すんなりと職場の人たちの中に溶け込んでいけた。
そういう先輩から、異性として見られたことは、
十五歳の少年にとって、少なからずショックなことだった。