写真の中で、美穂は泣いていた。
聞えるはずのない啜り泣きを、ぼくは聞いた気がした。


しかし、その表情はむしろ穏やかで、無残に緊縛され、
局部を晒された自分に酔っている、そんな風にも見えた。

おのれを恥じる一方で、恥辱を悦びと出来る精神を誇っている。
ぼくの目には、陶酔した女の泣き顔、そんな風に映った。


裸体に釘づけになっていたぼくの視線が、不意に揺らぐ。

写真を見た瞬間から、気はついていた筈だが、
裸体と表情の衝撃に置き去りにされた、もう一つの気づき。

写真の中の背景は、枠外の本棚や座卓、座椅子と同じだ。
そう。この写真が撮影されたのは、この部屋に違いない。


女体の神秘を暴いたその写真に、再び視線が惹き寄せられる。
ぼくは、美穂のスレンダーな姿態と無毛の女陰をじっと見つめた。

いつの間にか、台所の物音は止んでいた。

写真から目を上げた時、座卓の向こうには裸の美穂がいた。