ぼくの初体験は、「美穂」という名前の大学生とだった。
由布子同様、これも似た感じの名前だ。本名は出せないので。

バイト先の先輩から夕食に誘われたと、祖母に電話した。
女だといわなかったので、祖母は男の先輩をイメージしたはずだ。


美穂の家は、バイト先から徒歩で5分くらいの所にあった。

間取りは1Kで、部屋の本棚にはぎっしり本が詰まっていた。
教科書や資格取得の本、就職ガイド、そして小説やマンガなど。

隣室のキッチンで彼女が手料理を作っている間、
暇なぼくは本を抜き出しては、戻してを繰り返していた。


電話帳のような厚さの就職ガイドブックをパラパラとめくり、
元の場所に戻そうとした時、奥にちらりと肌色の何かが見えた。

ぼくは本を戻す手を止めて、逆に隣の本も、その隣も抜き出した。

立てられていた本と壁の間に、一冊の雑誌があった。
ぼくが目にしたのは、表紙モデルの肌の色だったらしい。

ファッション雑誌にしては、どうも雰囲気が変だな……。
そう思いつつ本を取り除いていったぼくは、題字を見て驚いた。

そこには、銀と赤の字で「SMマニア」と書かれていた。